Auto-Groove

中林香が贈る女性のための心と体と車のブログ

元・女性レーシングドライバーの中林 香(なかばやし かおる)が、クルマの運転はもちろん、元スポーツ選手としての経験と、大学で心理学を専攻して得た知識をもとに、よくある心の問題やちょっとした体の不調との向き合い方、ストレスの対処法など、ココロとカラダに優しい生活をおくるための知恵やテクニックをご紹介します。

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慣れるより習おう!
クルマの話, センスUPクルマ術

慣れるより習おう!

皆さんの中にはクルマを運転するコトを楽しいと感じている方もいるでしょうし、とてもプレッシャーを感じる方もいらっしゃることでしょう。
同じ1つのコトなのに、この違いはどこから生まれてくるのでしょうか?

運転が怖い、苦手意識があるという方にお話をうかがうと、たいていの場合「慣れていない」「判断が追いつかない」「下手くそと言われた」
といったような言葉が返ってきます。たしかに、免許を取ってすぐにベテランドライバーのような運転はなかなかできないでしょうし、経験の少ないコトに対して恐怖を感じるのは誰にとっても自然なコトでしょう。
わたしたち人間は、産まれてからずっと、この「経験と慣れ」という作業を繰り返して生きているといっても良いかもしれませんね。
赤ちゃんの頃には、何度も転びながら立ち上がるコトを覚え、誰に教えられるコトもなく自分の力で1歩づつ歩き始めますよね。
この時にもし「慣れていない」「判断が追いつかない」と感じてしまう赤ちゃんがいたとしたら、その赤ちゃんは歩くことに対して恐怖を感じて、一歩も踏み出せなくなってしまうことでしょう。
鉄棒も縄とびも、自転車に乗ることも、初めから上手にできるわけではなくて、なんども失敗を繰り返しながらカラダがその感覚を覚えるまで練習して習得したのではないでしょうか。
どれも上手くできるようになるまでは、自分の動作以上のコトは起こりにくいし、起こったとしても自分でなんとかコントロールできる範囲に留めておけたから、慣れるまで思う存分練習ができたんですよね。
それらに比べると、クルマの運転は少し勝手が違うかもしれません。
まず、クルマの運転は機械が担う部分がほとんどなので、経験や慣れとは関係なくアクセルを踏めばスピードが出てしまいます。
クルマの運転で経験を積むコトによって上手くなるのは、スピードを速くするコトではなく、周囲の状況にあわせてスピードをコントロールすることなんです。
そして、クルマに乗って走り出したとたんに、わたしたちはいきなり実践の場面に放り出されてしまいますよね。クルマは道路しか走れませんし、その道路にはさまざまな他者(他のクルマや歩行者)がすでに存在しているわけですから、どんなに慣れていなかったとしても失敗が許されない状況ということになってしまいます。
ですから、慣れないうちは恐怖や不安を感じるのが当たり前ですし、もしも全く感じないならば、その方がかえって危険なコトですよね。
運転に慣れるまでは怖いし、怖がって運転しなければ慣れるコトができない・・・。それではどうしたら安全に運転の経験を積めるのかなって悩んでしまいますよね。
そこでわたしがオススメしたいのは「慣れるより習ってしまおう!」
というコトなんです。
あなたの周りで運転が上手いな~と思う人がいたなら、その人の助手席に座らせてもらって、とにかくじっくり観察してみてください。
観察するポイントはドライバーの動作だけではなく、周囲の状況も含め「そのドライバーが何を感じ、どう対応しようとしているのか?」
というコトです。最初はわかりにくいかもしれませんが、その場合はまずクルマの外の状況(信号や他のクルマ、歩行者など)に注目して何かの変化があったらドライバーの目の動きや動作がどうなるのかを確認するようにしてみると、少しわかりやすくなるでしょう。
そのうちに「上手なドライバーは何かが起こってから対処するのではなく、何が起こるのかを予想しながら走っているんだ。」というコトに気がつくようになると思います。この「予測」の部分が経験や慣れの大きな利益になる部分なんですね。経験が浅いというコトは、この「予測」が出来ないため、何もかもがいきなり起こるように感じるし何かが起こってから慌てて対処しなければいけなくなるから怖いと感じてしまうんです。
ですから、実際に自分で運転しなくても、運転が上手い人の「予測」のしかたや反応を学んでしまえば、自分が運転する時にその学習が経験不足を補ってくれて、それまでのように「ただ怖いだけ」という状況を大きく改善できるというわけなんです。
ただし運転を観察させてもらう相手を選ぶ時には、その人の運転ならリラックスして安心していられるというような「自分と感性の合う人」を見つけてくださいね。
また、教え好きな人を助手席に乗せて運転を教わるのは、かえって逆効果になることが多いものです。なぜならば、運転中に横から色々と口出しされると、それ自体が外部刺激になってしまい集中力を妨げてしまったり、緊張を増してしまうからなんです。
隣に乗って「下手くそ」なんて言われたら、ますますどうしたら良いかわからなくなってしまいますよね。
実際に自分で経験しなくても、経験の多い人を観察するコトで得られるものが多いというコトは、クルマの運転であっても普段の生活であっても同じなのかもしれません。ただ一方的に教わろうとするのではなく、自分から観察して盗むくらいの感覚でいられれば、経験や慣れを十分に補ってくれる「何か」をきっと得ることができるでしょう。